「銅のアクセサリーってないんですか?」
「銅って公害とかもあったし、有害ですよね?」
「銅ってすぐ黒くなるし、アクセサリーにはむいてないですよね?」
『銅』はこんなイメージや疑問符がついている素材です。
アクセサリーと聞いて、皆さんは、どんな素材を思い浮かべますか?
シルバーやメッキなどの取り扱いやすいもの。
高級品なら金、プラチナ。
真っ先に、『銅』という発想を持つ方は少ないですよね。
でも実は、銅はあなたの間近にあって、違う角度からスポットライトを当てる事でアクセサリーとして輝く事が出来る素敵な金属なんです。
1.銅のアクセサリーが少ない理由
銅といえば茶色、くすんだ色イメージをお持ちかと思います。
“本来の色に戻しても酸化しやすく、すぐに茶色い10円玉のような色に…”という変色への懸念。
素材そのものがとても柔らかいのもあり
“ペンチやヤットコでの取り扱いで簡単に傷が…、綺麗にデザインしても作れない”
“可塑性(金属の保持性・保形性)が低く、一度曲がったらクセ付いて元に戻らない”
そういったデメリット部分がクリエイター側から取り扱いをしない(お客様・ユーザー様へのクレームへの恐怖感と手間の不確かさ)、アプローチをしないといった状況が現状でその結果、供給・製作がされず「銅のアクセサリー」の絶対数はそう多くはありません。
ごく一部のハンドメイド作品で見る事もありますが、「小傷はご了承下さい」といったデメリットがセットで書かれてあったり、少し安っぽいネガティブなイメージ構築への道筋になっています。
「銅は、アクセサリー適正は低い?」そう思われるかもしれません。
2.みんなが持ってる銅のネガティブイメージ
2-1.変色
先に書いた通り、銅本来の色はピンクゴールドのようなきれいな色。
ですが、経時変化(酸化)で茶色味を帯びて、黒に近づき(古い10円玉のような)、最後には緑青(ろくしょう)といわれるブルーグリーンの錆を纏います。(これはこれでとてもキレイなのですが、これはまた別の機会にご紹介します。)

2-2.身体に悪い
「銅は体に悪いから…」一般にこういったイメージをお持ちの方も少なくないと思います。
それは、先ほど書いたブルーグリーンの錆が、昭和の時代に「猛毒である」とか「有害である」と理科の教科書に書かれていたりする背景のもと、1955年~1965年頃、銅製の湯沸かし器、水道銅管が普及した後、風呂に青い水が出るといった「青水問題」が猛毒と「されていた」緑青と直結して大きなクレームの対象になった事がありました。
ですが、実はこれは全くの事実無根。
実際、1981年から国の研究として「緑青の有害性」に対する動物実験が実施され、1984年厚生労働省が緑青の無毒性を一般に公表しました。
足尾銅山での鉱毒・公害問題や、かつての金属の精錬技術発達前の銅に微量のヒ素が含まれていた事などがこの誤解の根底にあるとされています。現在では緑青を含む銅の有害性は完全に否定されており、むしろ、緑青は錆表面に被膜を作る事で腐食性・殺菌性を強める部分がある事や、その審美性に目を向られ、芸術や建築物に好んで使われるといった側面を浮き上がらせています。
2-3.銅によるアレルギー
「緑青の無毒性は分かったけど、私金属アレルギーだから銅は…」こういったイメージをお持ちの方もいらっしゃると思います。ですが、実は銅は金属アレルギーを「起こしにくい」といえる部類の金属だったりします。
各種機関が金属アレルギーに対する検査結果を公表していますが、対日本人のパッチテスト結果のデータの凡例では、銀で約0.1%、銅は約3%、安価なアクセサリーで使われる事の多いとされるニッケルに約17%というデータを見つけました。
3%という一例を多いと受け取られる方もいらっしゃるかと思いますが、実は「比較的安心」といった部分は皆様が日々、無意識で体感しているのです。
アクセサリーを例にすると、若い女性に好まれるシルバー925(スターリングシルバー)は、銀(アレルギーを起こしにくい)素材に、約7%の銅とその他の金属で精製されています。これは、純銀(SV1000)が非常に柔らかく加工に適さないといった側面を解決する為に精製されたもので、名だたるジュエリーブランドでもよく使われている素材です。

また、手ごろでも高級感のあるものとしてニーズを確立する18金(K18)も75%が金で15%は銀、10%には「銅」を用いて、純金の型崩れしやすい側面を補った合金としてその地位を確立しています。

女性に人気のピンクゴールドは、同じく金は75%、銅を15%で銀を10%としてあり、銅の純度を上げる事でその色味と高級感を演出しています。
もし、銅に対してアレルギーのある3%に該当していたら…
スターリングシルバーにも「銅」は含まれており、ご使用でアレルギーが出ています。K18もピンクゴールドも同様です。
多くの方に愛用される事の多いこの素材、アクセサリーが受け入れられている事が銅のアレルゲン要素の低さを裏付けているのです。
「10円玉(銅95%)を使用していたり、握っていて痒くなった方はそんなにいない。」といったのも現実的な裏付けですね。
3.生活に浸透している近年の銅
無毒性が実証された後の近年では「銅」は体に必要なミネラルとして認知されていたりと随分出世しました。血液の精製や脳活動の補助など、必須微量元素といわれており、「牡蠣」「レバー」「豆類」などから接種しています。(金属としての捕食を進めるものではありません。くれぐれもご注意下さい。)
2004年3月には『栄養機能食品』として表示が出来る栄養素として厚生労働省に認められ、現在では発育の活発な赤ちゃんへの粉ミネラルにも大事な栄養素として銅は添加されています。(母乳にも銅は栄養素として含まれています。)
他にも、殺菌性・抗菌性に目を向けた商品も身近にあり、特に殺菌性は強くインフルエンザやO-157、ノロウイルスにも効果があるという結果もあります。ドアノブやキッチンの三角コーナー、熱伝導性の良さからプロのシェフに愛用されるケトルやフライパンなども多くある中で、安全な素材「銅」として皆さんの知らないところで生活に浸透しているのです。
4.アクセサリー素材としての銅へのアプローチ
『でも、銅のアクセサリーはないのでしょう?』冒頭に書いた一文は、実は解決してます。
アクセサリーとしての銅のシェアは極少なく、その理由は説明の通りです。
クリエイターが、ブランドが、取り掛からない理由は明らか。
4-1.「銅のアクセサリーが無い=銅がアクセサリーに向いていない素材」ではない
ポイントは「できない」のではなくて「やらない」という部分です。理由が分かっていれば対策は出来ます。
その対策をすれば新しい切り口で素敵な商品として取り掛かるクリエイターやブランドが出ても不思議ではありませんし、使用するメリットもあります。
SV925やK18はハンドメイドや手芸に興味をお持ちの方ならご存じな様に素材としては高価です。SV1000やK24になると更に高額。
これを加工して販売となると、名だたるジュエリーブランドと価格での峻別化が難しい以上、商材として取り組むにはリスクの方が多く見えるなか、銅は比較的安価。
後述しますが、銅は、様々な加工の手間がかかります。
ですがその原料差額の分、手のこんだ、工夫されているデザインや付加価値要素の追加(天然石、加工など)を再現する事が可能となり、こだわりを価格に込める事の出来る安全な素材。
キットによる作成や、レシピからの製作を卒業したいような技術を持たれた方には特にオススメできる素材ともいえます。
- 銅を素敵なアクセサリーに変えるヒントについて知りたいクリエーターの方は「Lilmineの取り組み」をどうぞ
- 銅のアクセサリーをご覧になりたい方は、こちらから